す。だから俺もそうしないと損だというように考えられているようで、男の児《こ》なぞは小説などを読み得る年頃になると、ボツボツこんな迷いを起こす。そうして三十か四十になると、吾が児の純な鼻の表現を見て、
「まだ世間知らずだなあ」
 なぞと悲観するという。悪魔式鼻の表現研究者の卵は、こうして人間到る処に孵化《ふか》しつつあるのであります。
 これを防止するためには「鼻の表現」の価値と権威とを宣伝するのが一番の近道であります。大きな鼻の絶頂に意志や感情を象徴した五色の旗を立てたポスターなぞは、最も眼新しくて面白かろうとさえ考えられる位であります。いずれにしてもその人間の腹の底にあるものは必ず鼻の表現に現われるのであるという事を、出来るだけ深く明らかに全世界の人類に知らせるのが何より急務であろうと考えられます。
 善因善果、悪因悪果、悔い改めよの、心を入れ換えよの、やれ神罰の、仏罰の、天の怒り地の祟《たた》り、親罰、子罰、嬶罰《かかあばち》のと、四方八方からの威し文句の宣伝ビラが昔から到る処ふり撒《ま》かれておりますが、近頃の人間は頓《とん》と相手にしなくなりました。恰《あたか》も往来の塵《ちり
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