しか扱われぬ事になります。本人もこの程度の成功に満足して、「とにかく一件がバレなければいい」というような情ない日を送る事になります。自分の鼻の表現に呪われた男ほどミジメなものはありませぬ。
その他、自分の良心に対する女性の正面攻撃に出合った場合、男性の執る態度や手段はいくらでもあります。利口なのや馬鹿なの、気の長いのや短いのなぞに依って種々雑多に千変万化しますが、いずれにしても鼻の表現に裏切られる事は免れ得ませぬ。本当に前非を後悔して、悄然《しょうぜん》として異性の膝の前に「お許し」を哀願しない限り、自分自身の鼻の表現の根底を作っている本心の「お許し」も出ませぬ。鼻の表現の底を往来する「暗い記憶の影」は除かれない事になります。
ありとあらゆる男性は、皆申し合せたようにこのお許しの哀願を忌避します。忌避するためにジタバタ致します。知恵のあらん限りを絞って、掛引きのあらん限りを試みます。芝居や小説のタネが尽きませぬ。鼻の表現研究の興味も尽きない事になるのであります。
しかし又世間は御方便なもので、一方から見るとこの鼻の表現の影響は、こう迄厳密に男女関係に当てはまって行きませぬ。
つ
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