まり男性ばかりでなく相手の女性の鼻の表現――本心や性格にもいろいろな条件が付いていて、男性の鼻の表現に対する感覚が鈍っているのであります。惚れた弱味や惚れない強味、先入主や後入主、自惚《うぬぼ》れや贔負《ひいき》目、身の可愛さや子の可愛さなぞいう物質的や精神的な条件が、底も知れぬ位入れ交《まじ》って淀みつ流れつしております。その上をその日その日の気分の風が吹き、その時その時の感情の波が立ち騒ぐといった調子で、相手の鼻の表現を底の底まで映し出しながらも、風に吹かれ波に消され、又は流れに引かれて、思うがままの態度を取りにくいのが普通であります。そのために笑って済ます切なさもあれば、泣き寝入りのあわれさもあります。一方には女郎の千枚|起請《きしょう》や旅役者の夫婦約束が、何の苦もなく相手を自殺させるなぞいう奇蹟が続々と起って来ることになるのであります。
悪魔式鼻の表現はこの間に活躍して縦横|無礙《むげ》にその効果を挙げるので、鼻の表現研究の必要もここに到って又|益《ますます》甚だしくなるのであります。
貞操と鼻
――悪魔式鼻の表現(十一)
近来「男子の姦通罪を
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