ことは》に 流行《はや》らせむかな
あなをかし あなおもしろや
おもしろの かみきり虫や
ヒヒヒホホ カヤ/\/\/\」
女王《きみ》の御代 これより朗《ほが》らに
大御心 ひらけ浮かれて
歌宴《うたげ》して 舞ひ給ふとて
腋下《わきした》の おん渦巻毛《うづまきげ》
こと/″\く 抜かせ給ひて
かの虫に あたへ給ひぬ」
さればわが 女王《きみ》の御果て
み誓ひの 固きにまかせ
御柩《みひつぎ》の 御片隅に
彼《か》の虫の 木乃伊《ミイラ》を作り
秘めやかに 納めまつりつ
女王様《わがきみ》の 髪切虫の
生《あ》れまさむ 来世を待ちね
美《うる》はしき 坊主頭を
永久永遠《とことは》に 流行《はや》らせむ為」
されば聞け 後の世の人
女王様《わがきみ》の 木乃伊《ミイラ》納めし
御柩《みひつぎ》の おん片隅に
女王様《わがきみ》の 御髪《みぐし》喰《は》みつゝ
髪切虫 今も啼《な》くなり
千年の 神秘をこめて
キツチ/\……ヰツチ/\……
……ギイ/\/\/\/\……」
[#ここで字下げ終わり]
「キッキッ。ギイギイギイギイギイ」
桐の葉蔭の髪切虫は、思わず啼いてしまった。その拍子にイーサーの霊動がフッツリと感じられなくなってしまったが………。
……しかし……それでも若い髪切虫は感激にふるえ上ったのであった。
ただ残念なことに、自分が果して二千年前の埃及《エジプト》女王クレオパトラの生れ変りなのか。それとも女王様の寝棺の中に秘め置かれた髪切虫か、※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]河馬《アマム》にも喰われず、太陽神《オシリス》にも叱られずに二千年後の今日《こんにち》、輪廻転生《りんねてんしょう》の道理に恵まれて、呼吸《いき》を吹返して来たものか、その辺のところがサッパリ判明しなかったが、やがて間もなく、そんな事はどうでもいい事に気が付いたので、髪切虫は一層、朗かになった。
「そうだ。妾《わた
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