たかわからないが、思えばこの時の吾輩こそ、大馬鹿の大馬鹿の三太郎だったのだね。
こんな事実が度重《たびかさ》なるうちに……吾輩ヤット気が付いたもんだ。君だってここまで聞いて来れば大抵、感付いているだろう。……ウンウン。その通りなんだ。明言したって構わない。爆弾密売買の元締連中の手が朝鮮の司法関係にまで行きまわっているんだ。何しろその当時の朝鮮の官吏と来たら、総督府の官制が発布されたばかりの殖民地気分のホヤホヤ時代だからね。月給の高価《たか》いのを目標に集まって来たような連中ばかりだから、内地の官吏よりもズット素質が落ちていたのは止むを得ないだろう。……それと気が付いた吾輩は、それこそ地団太《じだんだ》を踏んで口惜しがったものだ。地団太の踏み方がチットばかり遅かったが仕方がない。
そこでボンヤリながらもそうと気が付くと同時に吾輩は、ピッタリと講演を止めてしまって、爆弾漁業の本拠|探《さぐ》りに没頭したもんだ。先《ま》ず手頃の人間で吾輩のスパイになってくれる者は居ないか……と頻《しき》りに近まわりの人間を物色してみたが、それにしてもウッカリした奴にこの大事は明かせない。何しろ五十万人の
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