後《のち》の事までもすっかりわかる。妃の素性もわかるに違いない。成程、返す返すもよい工夫だ。では今から直ぐに話してくれ。四人一所に聞いていようから」
「一体これからどんな事が始まるのか」
「嬉しい事か。悲しい事か」
「楽しい事か。恐ろしい事か」
「早くその魔法を使ってくれ」
「待ち遠しくて堪らない」
 と四人は口を揃えて頼んだ。
 けれども赤鸚鵡は暫くは話しを初めなかった。じっと耳を澄まし眼を光らし、遠くの後《のち》の事を考えている様子であったが、やがて羽根づくろいをして静かに奇妙な声で話を初めた。
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   第二篇 水底の鏡


     九 湖の秘密

 この藍丸国は四つの国にわかれておりまして、東の方を日見足国《ひみたるこく》といい、西の国を夜見足国《よみたるこく》といい、北を加美足国《かみたるこく》といい、南の方を宇美足国《うみたるこく》といって、それぞれその国の名を名前にした王様が治めているので御座いますが、藍丸王はその四人の王の上の王様で、四ツの国を合わせて一つの藍丸国と称えているので御座いました。
 又藍丸国の北と西は、涯《はて》しない沙原《さばく》で囲まれ
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