が乗っかっていた。その赤い鳥は藍丸の王宮から逃げ出して今大勢の兵隊に一日がかり探されている彼《か》の赤鸚鵡と寸分違わなかったが、只その眼玉ばかりは今までと違って、紅玉《ルビー》のように又は火のように、あたりを払って輝やいていた。
それを左の手に据えて、新規の藍丸王はつかつかと白髪小僧に近寄りながら――
「どうだ、藍丸王。見えたか、聞こえたか、解かったか。ハハハハハ。見えまい、聞こえまい、解かるまい。併し無駄だろうが云って聞かせる。云うまでもなく俺は最前の四人の魔者が化けたのだ。石神の怨みの固まりだ。今まで赤鸚鵡を種々《いろいろ》に使って、やっとお前をここまで連れ出して来たのだ。気の毒だがお前の姿は俺が貰った。只|生命《いのち》だけは助けてやるから、その代り賤《いや》しい乞食姿になって、何も見ず、何も聞かず、食べず云わず嗅《か》がずに、世界中をうろ付いておれ。その間《ま》に俺は王に化け込んで、勝手|気儘《きまま》な事を為《す》るのだ。
ああ、東の山に月が出かかったようだ。どれ。そろそろ出かけようか」
と二足三足踏み出したが、又引きかえして来て――
「待て待て。ここでは顔付きがまるで
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