た向うの有様を見ると、見事な飾りをした広い廊下で、天井《てんじょう》や壁に飾り付けてある宝石だか金銀だかが五色《ごしき》の光りを照り返して、まことに眼も眩《くら》むばかりの美しさである。そのうちに燈火《あかり》はだんだん近附いて、やがて持っている人の姿がはっきりと見えるようになった。
 見ると七人の持《も》ち人《て》の内真中の一人だけは黄色の着物を着たお爺さんで、あとの六人は皆空色の着物を着た十二三の男の児であった。そうしてそのお爺さんは、最前《さっき》美留女姫と白髪小僧とを追っかけた、眼の玉の青いお爺さんに相違《ちがい》なかった。その中《うち》に七人は直ぐに自分の傍まで近付いて来たが、その持っている手燭《てしょく》の光りで四方《あたり》を見ると、ここは又大きい広い、そうして今の廊下よりもずっと見事な室《へや》である。そうして白髪小僧自身の姿をふりかえって見ると、こは如何《いか》に。最前《さっき》までは粗末な着物を着た乞食姿で、土の上に倒れていた筈なのに、今は白い軽い絹の寝巻を着て、柔らかい厚い布団《ふとん》の中に埋もっている。その上に自分の顔にふりかかる髪毛《かみのけ》を見るとどうで
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