いでどこかの室《へや》へ運んで行きました。
 槍の穂先に取り囲まれた紅木大臣は、身動きも出来ぬようになりまして、棒のように突立ちながら歯切《はぎし》りをして、兵士の顔を睨みまわしていましたが、やがてその持っていた剣をカラリと床の上に取り落すと、そのまま高い暗い天井を仰いで、髪毛を一筋|毎《ごと》にビリビリと震わしながら――
「アーッハッハッハッ」
 と高らかに笑い出しました。その気味悪さ。恐ろしさ。周囲《まわり》の兵士は思わず槍《やり》を手許《てもと》に控えて、タジタジとあと退《ずさ》りをしました。
 けれども紅木大臣の笑い声は、なおも高らかに続きました――
「アッハッハッハッ。可笑《おか》しい可笑しい。こんな可笑しい事が又とあろうか。何という馬鹿馬鹿しい事だ。アッハッハッハッ、俺は今やっと思い出した。昔の名前を思い出した。俺の名前は美留楼《みるろう》公爵というのだった。何だ、馬鹿馬鹿しい、馬鹿馬鹿しい。馬鹿馬鹿しい。アッハッハッ。
 あれ、美留女が本を読んでいる。白髪小僧が居眠っている。アハ。アハ。何の事だ。俺はこのお話を本当の事かと思った。これ、美留女。止めろ。止めろ。そんな本を読
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