、涙が止め度なく流れましたが、やがてお母様の静かに御歌いになる子守歌を聞きながら、暖い乳房を含んで柔順《おとな》しく眠ってしまいました。
「牡丹《ぼたん》の花がひイらいた。
 桜の花がひイらいた。
 夢の中からひイらいた。
 可愛いお眼々がひイらいた。
   お太陽様《ひさま》がニコニコと、
   お月様がニコニコと、
   可愛いお眼元お口もと、
   一所に笑ってニコニコと。
 百合の花が閉《つぼ》んだ。
 お太陽様《ひさま》が沈んだ。
 可愛いお眼々もうとうとと、
 夢の中へと閉《つぼ》んだ」

     二十二 白木の寝台

 翌る朝まだ夜が明け切らぬうちに王宮の表門が左右に開いて二人の騎兵が駈け出しましたが、門を出ると二ツにわかれて、一ツは青眼先生の方へ駈け出し、一ツは紅木大臣の家の方に飛んで行きました。
 紅木大臣は昨日《きのう》濃紅《こべに》姫を送り出すと直ぐに門を固く鎖《とざ》して、二人の小供の死骸を石神の部屋に移して、そこで公爵夫人と一所に一日一夜《いちじつひとよ》の間泣き明かしましたが、一方濃紅姫の事も気にかかって心配で堪《たま》りませぬ。最早《もう》お后になった知
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