湖の岸まで来ましたが、その声はどうも湖の真中あたりから聞こえて来るようです。
 姫は直ぐにザブザブと湖の中に這入って行きましたが、水は次第に深くなって、膝《ひざ》から腰へ腰から胸へと届いて来ました。それでも構わずになおも進んで行きますと、姫はとうとうすっかり水の底へ沈んでしまいました。けれどもちっとも息苦しい事はなく、四方《あたり》は皆緑色になってしまって、その中に火の山の光りが輝き落ちて、沢山の花の形になって浮かんで、まるで花園のようになってしまいました。その中を押しわけ押しわけ行きますと、やがてその花園の真中に、お母さまが白い衣服《きもの》を着て立っておいでになりまして、姫を見ますと莞爾《にっこり》とお笑いになり、そのまま姫を軽々と抱き上げて、優しい手で髪を撫で上げながら――
「まあ、お前は今までどこへ行っていたの。これからお母さまに云わないで遊びに行ってはいけませんよ。さぞお腹が空いたでしょう。さ、お乳をお上り」
 と云いながら懐を開いて、乳房を出してお含ませになりました。
 姫は身も心もいつの間にか、赤ん坊になってしまった心地がして、何だか悲しいような嬉しいような気になりまして
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