っと姫の肩に手をかけた者がありますから、ハッとしてふりかえって見ますと、それは懐かしい藍丸王でありました。王は親切に姫の手を執《と》って――
「お前はもうすっかり気分はよいのか。昨日《きのう》の朝お前が気絶した時、俺《わし》は随分心配したが、最早すっかり治ったのか。それは何より嬉しい事だ。では最早《もう》夜が明けたから二人で花園に散歩に行こうではないか」
と仰せられます。濃紅姫は不思議に思って、今は冬で御座いますから何の花も御座いますまいと申しますと、王様は御笑いになって、まあ来て見るがいいと無理に姫を花園に連れておいでになりました。
来て見るとこれは不思議――春秋の花が一時に咲き揃って、露に濡れ旭《あさひ》に輝やいていますから、濃紅姫は呆れてしまって、恍惚《うっとり》と見とれていますと、王様はニコニコお笑いになりながら――
「どうだ、濃紅姫。俺《わし》が咲かせようと思えば花はいつでもこの通りに咲くのだ。併しお前に聞いて見るが、お前はこの沢山ある花の中で、どの花が一番好きなのか。赤か。青か。黄色か。それとも白か。黒か」
とお尋ねになりました。
濃紅姫は暫く返事に困って考えていま
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