その横顔を見ておりました。すると、この時その少女が、六人の中からズカズカと前に進み出て、王様の前に恐れ気もなく近寄りました。そうして帽子を取って最敬礼をしますと、やがて銀の鈴を振るような声で挨拶を致しました。
「王様。妾《わたし》はこの国の南の海の底にある海の国の女王で御座います。この度の王様の御布告《おふれ》を家来の蟹奴《かにめ》から承りまして、御恥かしながら海の底から、はるばると御目見得に参ったもので御座います。妾はこれまで参りますのに、誰も従《つ》いて来る者が御座いませぬから、旅を致すのに都合のよいように、こんな男子《おとこ》の姿を致して参りました。こんな勝手な風采《なり》を致しまして、陸の大王様に御目見得に参りました失礼の程は、何卒《どうぞ》御許し下さいまし。そうして御目見得の印に持って参りました、この宝石の少しばかりを御受け収め下されましたならば、妾はもとより海の底の国人《くにひと》も皆、王様の広い御心に対して、はるかに御礼を申し上げる事で御座いましょう」
 と云いながら、懐中から海の藻の一掴みを出して高く捧げましたが、その中から大きな紫色の金剛石《ダイヤモンド》の光りが虹の
前へ 次へ
全222ページ中174ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング