って、橋の欄干《てすり》から身を躍らして河の中へ飛び込みました。
 この体《てい》を見ますと、今まで橋の欄干《てすり》に縋り付いて泣いていた婆さんが、急に泣き止んで矗《すっく》と立ち上りまして、いきなり頭巾や、外套や、手袋をかなぐり棄てますと、お婆さんと見えたのは美留藻《みるも》が化けたので、今ドンドン流れて行く果物と、それを追《おい》かけて行く紅矢を眺めて気味悪くケラケラと笑いました。そうして声高く、
「お兄様……悪魔の美紅をよく御覧なさい」
 と云うかと思うと直ぐに、傍に脱ぎ棄ててある紅矢の帽子から靴まですっかり盗んで身に着けるが早いか、ヒラリと「瞬」に飛び乗って、強く横腹を蹴《けり》付けながら、一足飛びに都の方へ飛び出しました。

     十五 白木綿

 悪魔美留藻はやがて何百里という途を矢のように飛ばして、名前の通り瞬く間に都に到着しますと、美留藻は先ず呉服屋へ参りまして、晒木綿《さらしもめん》を買いまして、それからとある人通りの少ない横路地へ這入りました。そうして上衣やズボンの方々に泥を沢山なすり付け、その上に顔中すっかり繃帯《ほうたい》をして眼ばかり出して、男だか女だか
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