でした。
 お家の人は皆驚いて感心をして賞め千切って、いろいろのものを買って下さいました。しかし女の児はそれを大切にしまって、今までちえ子さんが使い古したものばかり使いました。
 けれどもお家の人よりも何よりも驚いたのは学校の先生でした。今までは何をきいてもうつむいてばかりいたちえ子が、今度は何を聞いてもすっかり勉強しておぼえていて、時々は先生も困る位よい質問を出します。
 そればかりでなく、今まで運動場で遊んでいても、直《すぐ》に泣いたり、おこったり、すねたり、よけいなにくまれ口をきいたりして嫌われていたちえ子が、急に親切にやさしくなって、どんな遊戯でもいやがらずに、それはそれは元気よく愉快に仲よく遊びますので、友達の出来る事出来る事。今まで寄り付かなかったよいお友達が、みんな遊びたがってお家にまで来るようになりました。
 女の児はいつもよいお友達と音なしく遊んで、音なしく勉強しました。
 来るお友達も来るお友達も、みんなちえ子さんの机の上の一輪ざしに生けてある白椿の花を賞めました。その時女の児はいつもこう答えました。
「あたしはこの白椿のようになりたいといつも思っています」
「ほん
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