。その上には、さながらに、それ等の人形たちが遊び戯れた遺跡であるかのように、色々な食器、豆のような玩具、花籠《はなかご》、小さな犬、猫、鼠、猿、小鼠のたぐいが、殆んど数限りなく、行儀のいい円陣や、方陣を作って並んでいる。その間に静止している巨大な甲虫《かぶとむし》、華麗な蝶々、実物大の鳩、雛子《ひよっこ》、木兎《みみずく》……。
又、その丸|卓子《テーブル》の周囲には、路易《ルイ》王朝好みのお乳母《うば》車、華奢《きゃしゃ》な籐椅子《とういす》、花で飾った揺籠《クレードル》、カンガルー型のロッキングなぞが、メリー・ゴー・ラウンド式に排列されている……そんなもの一つ一つにも、それぞれ様々の微笑を含んだ人形が、ピエロ姿の行列を作ってブラ下がったり、振袖《ふりそで》姿で枕を並べたり、海水着のまま、魚のようにビックリした瞳《め》をして重なり合ったりしている。
その中央の高い、暗い、円《まる》天井から、淡紅《うすべに》色の絹布《きぬぎれ》に包まれた海月《くらげ》型のシャンデリヤが酸漿《ほおずき》のように吊り下っていたが、その絹地に柔らげられた、まぼろしのような光線が、部屋中の人形を、さながら
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