二人の男と荷車曳き
夢野久作
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)弾丸《たま》
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昔ある処に力の強い、何でも上手の男が二人おりました。二人共知らぬ者がない位名高かったのですから、どちらがえらいかわかりませんでした。
ある日二人は往来で出会うとお互いに自慢をはじめましたが、ただ口で言っただけではわからないので、とうとう決闘をする事になりました。
二人はピストルを持って来て撃ち合いをはじめましたが、どこを打っても弾丸《たま》が途中で打《ぶ》つかってどっちにも当りません。
次には剣《つるぎ》を持って来て斬り合いましたが、打ち合うたんびに剣が折れて斬り合うことが出来ません。
二人はとうとう取り組み合いをはじめましたが、どちらも力が同じように強いので、取り組んだまま動く事が出来ません。そのうちに日は暮れるしおなかはすくし、二人とも疲れてイヤになって来ましたが、負けるのが口惜《くや》しいからやめる訳にゆきません。とうとう二人共閉口して一時に、
「助けてくれイ」
と叫びました。ちょうど空車を曳《ひ》いて傍を通りかかった男は、ビックリして車をとめて、
「ど
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