「でも……トテモ息苦しいのよ。だって同性愛なんて日本にだけしかない事でしょう。朝鮮《おくに》ではソンナ話、聞いたこともないんですから、ドウしたらいいのかわかんないんですもの。呉羽さんと同じ位に妾が呉羽さんを好きにならない限り、どうする事も出来ないじゃないの。女蛇に魅入られたようなタマラナイ気持になるだけよ。それがトテモ底強い魅力を持って迫って来るんですから尚更《なおさら》、息苦しくなって来るのよ」
「手紙も何も来ないのかい呉羽さんから……」
「イイエ。そんなもの一度も来たことないわ。妾が現実にそう感じているだけなの」
「フ――ム。そうすると……どうなるんだい……ボ……僕は……」
「アラ泣いていらっしゃるの……お兄様は……」
「泣いてやしないよ。怖いんだよ。僕は……」
「チットモ怖いことないわ。お兄様はただあの女《ひと》に欺されていらっしゃればいいのだわ。あの女《ひと》は、まだ轟さんを殺した犯人について疑っていらっしゃるのでしょう……ね……そうでしょう。ですから貴方に頼んで探してもらおうと思っていらっしゃるんですから、その通りにしてお上げになったらいいでしょう」
「何だか訳がわからなく
前へ
次へ
全142ページ中91ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング