ながら寝椅子に帰り、呉羽の身体《からだ》を抱き上げる。
「きょうは、私の方からお前にお願いがあるんだよ」
と少し真面目に帰りながら、二人の身の上話を初め、前の幕の通りの事を簡略に物語り、二人が真実の親子でない事を明らかにする。
その一言一句に肩をすぼめ、眼を閉じて魘《おび》えながらも、不思議なほど冷然と聞いていた呉羽は、やがて冷やかな黒い瞳をあげて微笑する。
「それで妾にお願いって仰言るのはドンナ事なの……」
轟氏は忽ちハラハラと涙を流し、熱誠を籠めた態度で、呉羽の両手を握る。
「……オ……俺は、お前を一人前に育て上げてから、両親の讐仇《かたき》を討たせようと思って、そればっかりを楽しみの一本槍にして、今日まで生きて来たんだ」
「……まあ……そんな事……どうでもよくってよ。今までの通りに可愛がって下されば、あたしはそれでいいのよ」
「……ウウ……そ……それは……その通りだ。……と……ところがこの頃になって……俺は……俺に魔がさして来たんだ。もちろん最初の目的は決して……決して忘れやしない。必ず……必ず貫徹させて見せる。生蕃小僧は、お前の一生涯の讐敵《かたき》だから、この間お前が頼
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