こか貴方とお兄様とで、別荘をお建てになりたい処があったら、御遠慮なく仰言って下さいって……トテモお兄さまの脚本を賞めてらしたわ」
「オイオイ。お前ドウカしてやしないかい」
「イイエ。ほんとの話なのよ。そうして帰りがけにトテも立派なリネンの洋服と、ダイヤの指輪と、舶来の帽子とハンドバッグと、靴と、トランクと、一等寝台の切符と……」
「チョット待ってくれ美鳥《みいちゃん》……イヨイヨおかしい。美鳥《みいちゃん》は僕の留守に、竈《へっつい》の神様へ唾液《つばき》を吐きかけるか何かしたんだね」
「アラ。そんならお帰りになってから品物をお眼にかけるわ。また、そのほかにお金を千円頂いたのよ」
「タッタ三分間でかい」
「ええ。ここに持ってるわ」
「馬鹿。いい加減にしろ」
「あら。お聞きなさいったら……それから帰って来てロッキーの支配人にお眼にかかって、そんなお話をしたら……貴美子の奴、飛んでもないイタズラをしやがる……ってね。真青になって聞いてらしったわ。そうしてイキナリ私の前に手を突いて、どうもありがとう御座いました。よく帰って来て下さいました。あの人にかかっちゃ叶いません。どうぞ、これから後《の
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