呑仙士
夢野久作
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)呑仙士《ノンセンス》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)正月|※[#「勹<夕」、第3水準1−14−76]々《そうそう》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「勹<夕」、第3水準1−14−76]々
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筆者は酒が一滴も飲めないのに、友達は皆酒豪ばかりと言っていい。しかも現代を超越した呑仙士《ノンセンス》ばかりで、奇抜、痛快の形容を絶した逸話をノベツに提供して、筆者の神経衰弱を吹き飛ばしてくれる。
福岡の九州日報社という民政系の新聞社にいる頃、社員で酒を飲まないのは私一人であった。
私と一緒に地方版の編集をやっていた松石という男は、月末近くなると、茶褐色に変色したカンカン帽を持って、一巡する。一銭入れる者もあれば、十銭入れるものも在る。運よく原川社長(旧民政系代議士)が来合わせると五十銭ぐらい入れて貰ったりして感激の涙に咽《むせ》んで帰って来る。
むろんその金で飲みに行く
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