ら撃つのですから、弾丸《たま》はとんでもない方へ行ってしまいます。その間に無茶先生と豚吉とヒョロ子を乗せた馬はドンドン逃げてしまいました。
やがて馬が或る山の麓《ふもと》まで来ますと、無茶先生は馬から下りまして、
「サア、ここまで来れば大丈夫だ」
と、ヒョロ子を馬から下ろしてやりますと、ヒョロ子も背中から豚吉を下ろしてやりました。そうして三人は鼻の穴の綿を取って棄てました。
無茶先生はそれから馬をもと来た道の方へ向けて、お尻をピシャリとたたきますと、馬は驚いてドンドン駈けてゆきました。
裸体《はだか》のままの無茶先生は豚吉とヒョロ子を連れて、それからすこしばかり行ったところの町で一軒の宿屋に這入りました。
ところが宿屋の者は三人の奇妙な姿を見ると、恐ろしがってなかなか泊めてくれませんでしたから、それじゃ物置でもいいからと云いましたけれども泊めてくれません。そのうちにその宿屋の表には見物人が黒山のように集まりました。
無茶先生はとうとう怒り出してしまいました。
「この馬鹿野郎共。何が珍らしくてそんなに集まって来るのだ。人間だから裸で居るのもあれば、背の高いのもあれば低いのもあ
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