無茶先生は、
「ウーン。ブルブルブル」
と眼をさましました。そこへも一パイ頭からバケツの水をブッかけましたので、無茶先生は、
「ウワア。夕立だ、雷だ」
と云いながら飛び起きました。
その様子が可笑《おか》しかったので、ヒョロ子も豚吉も腹を抱えて笑い出しましたが、無茶先生は頭から濡れたまま眼をこすってよく見ますと、思いもかけぬヒョロ子が豚吉を背負って立っていますので、又驚きました。
「ヤア、お前達はどうしてここへ来たのだ」
と尋ねました。
ヒョロ子は落ちかかる豚吉をゆすり上げながら今までのことをお話ししますと、無茶先生は面白がってきいておりましたが、
「フーンそうか。それじゃ、町中の奴がお前達夫婦を見たいと云って追っかけまわしたのか。それは困ったろう。しかし、それというのも、お前たちがおれの云うことをきかないからこんなことになるのだ。おれの云うことをきいて背骨を入れかえてさえおけば、そんな眼に会わなくても済むのだった」
と云いましたので、ヒョロ子は豚吉も気まりがわるくなって、
「ほんとに済みませんでした。もうこれからどんなことをされても恐がりませんから、どうぞ当り前の人間にし
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