うですから、ヒョロ子は占めたと思いまして、高い屋根の上からその低い屋根の上に両足を揃えて飛び降りますと、その屋根は腐っていたものと見えまして、ヒョロ子と豚吉の重たさのためにズバリと破れました。そうしてその勢いでヒョロ子は豚吉を背負ったまま屋根の下の天井までも打ち抜いて、その下に寝ている人の腹の上にドシンと落ちかかりました。
「ギャッ。ウーン」
と云って、寝ている人はそのまま眼をまわしてしまいましたが、そのおかげでヒョロ子も豚吉も怪我をしないで起き上って見ますと、こは如何《いか》に……眼をまわしているのは無茶先生で、そこいらには鍋だの焜炉《こんろ》だの豚の骨だの肉だのが一面に散らばっております。その横には最前の馬もまだ足を投げ出して寝ています。
「まあ。大変よ、無茶先生ですよ。さっきの豚を捕まえて召し上って、寝ていらっしたところですよ。その上から私たちが落ちかかったのですよ……まあ、ほんとにどうしましょう」
とヒョロ子は泣声を出しました。
「心配するな。そこにあるバケツの水を頭からブッかけて見ろ」
と豚吉が背中から云いましたので、ヒョロ子はその通りに無茶先生の頭からブッかけますと、
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