ポド容易《やさ》しい仕事なんだ。
先《ま》ず博士の卵を探し出すんだ。博士の卵なんて滅多に居ないようだが、気を付けてみると虱《しらみ》の卵と同様、そこいらにイクラでも居るんだ。天下の青年、悉《ことごとく》博士の卵ならざるなしと云っていい位なんだ。
その中でも理窟の強い奴の方が見込がある。何でも理窟の世の中だからね。「親は何故《なにゆえ》に吾々を生みたるや」ナンテいう余計な事を、一生懸命に考え詰めて、何でもカンでも理窟に合わせて終《しま》わないと鳥目だの、近眼《ちかめ》だの、神経衰弱になる位、熱心な奴ならイヨイヨ上等だ。
その結果「親は面白半分に吾々を作りし者也」と解決を付けた奴は取敢えずアメリカあたりの文学博士になる奴で、「故に吾々は親に対して責任無し」と結論する奴はソビエット直輸入の赤い法学博士の卵だろう。「[#ここから横組み]1×1=1[#ここで横組み終わり]」なるが如しと論ずる奴は多分の独逸《ドイツ》工学博士を含んだ卵で、「親は自分の老後を養わせむために吾々を生みし者也」と解釈する奴は仏蘭西《フランス》経済学博士の輸入卵と思えばいい。「その理由を発見する能《あた》わず」と叫ぶ
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