、人間の運てえものはドコまでも不思議なもので……ヘエ……。

 博覧会の方では大騒ぎだったそうです。あっし[#「あっし」に傍点]と二人の女がダシヌケに行方不明になったてんで警察に頼んだり何かして騒いだそうですが、わかる気づかいはありませんや。気の毒なのは藤村さんで、あっしの代りに礼服《フロッキ》を着て台湾館の前に立たされて、代りが出来るまでノスタレ爺《じい》と一所に「わんかぷ、てんせんす」をやらされたもんだそうで、二三日やってる中にお尻のポケツへジャラジャラ銀貨が溜まったのはいいが、声がスッカリ嗄《か》れちゃって電話にかかれなくなっちゃったそうで……無理もありませんや。木遣りなんか唄ったこたあねえんですからね。おまけに怒鳴りながらも、ずいぶん気も揉《も》んだそうですからね。……多分あっし[#「あっし」に傍点]が二人の女を誘拐《かどわか》したんだろうテンデ、あべこべに世話あした支那料理店《しなりょうりや》から台湾館が損害を取られそうになっちゃったそうで……大工の治公《はるこう》って奴はソンナ大それた人間じゃねえテンデ藤村さんが一生懸命、頑張ってくれたそうですがね。
 そのうちに聖路易《セ
前へ 次へ
全52ページ中45ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング