りも可愛いくれえで、フイ嬢《ちゃん》とお揃いの前髪を垂らして両方の耳ッ朶《たぼ》に大きな真珠をブラ下げた娘《やつ》が、翡翠《ひすい》色の緞子《どんす》の服の間から、支那《チャンチャン》一流の焦《こ》げ付くような真紅の下着の裾をビラ付かせながらジロリと使う色眼の凄かったこと……流石《さすが》のあっし[#「あっし」に傍点]も一ぺんにダアとなっちゃったんで……流石の[#「流石の」に傍点]だけ余計かも知れませんが、誰だってアイツにぶつかったらタッタ一目のアタリ一発でげしょう。ハタからフイ嬢《ちゃん》がオロオロ気を揉んでいるようでしたが、そうなるとモウ問題じゃ御座んせん。
その場でインキを二つ三つぶっ付け合うと……ヘエ……ウインクですか……どうも相すみません。亜米利加じゃインキの方が通りがいいんで……ツイうっかり、そのインキの方にきめちゃったんで……そいつに気が付くとフイ嬢《ちゃん》が慌てて卓子《テーブル》の向うからあっし[#「あっし」に傍点]に手を振って見せましたが、そうなったら夢中でゲスから気にも止めません。ただその時にフイ嬢《ちゃん》を振り返って睨み付けたチイ嬢《ちゃん》の眼付の怖しかっ
前へ
次へ
全52ページ中22ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング