問題にならねえ。若さといい、男前といい、一番|鬮《くじ》の本鬮《ほんくじ》はドッチミチこっちのもんだがハテ。ドッチから先に箸《はし》を取ろうかテンデ、知らん顔をして「わんかぷ、てんせんす」のおまじない[#「おまじない」に傍点]を唱えながら二三日ジッと様子を見ているとドウです。このチイ嬢《ちゃん》とフイ嬢《ちゃん》の二人が一緒に、あっしの方へ色目を使い初めたじゃ御座んせんか。
 ヘヘ……どうも恐れ入りやす。おっとっと……こぼれます、こぼれます。どうもコンナに御馳走になったり、勝手なお惚気《のろけ》を聞かしたりしちゃ申訳《もうしわけ》御座んせんが、ここんところが一番恐ろしい話の本筋なんで致方《いたしかた》が御座んせん。どっちみち混線させないようにお話しとかないと、あとで筋道がわからなくなりやすからね。ヘヘ、恐れ入りやす。
 二人の中《うち》でもフイフイっていうのは、まだ十七か八の初々《ういうい》しい聡明《りこう》そうな瞳《め》をした、スンナリとした小娘でしたが、あっし[#「あっし」に傍点]に色目を使いはじめたのはドウヤラ此娘《こいつ》の方が先だったらしいんです。台湾館に来る匆々《そうそう》
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