シッコも眼が釣上っちゃって、今にもポンポンパリパリと破裂しちまいそうな南京《ナンキン》花火みてえな気もちになっちまいましてね。哀れとも愚かとも何とも早や、申上げようのない「ふおるもさ、ううろんち」が一|対《つい》、出来上ったもんでゲス。
 ところがここに一つうまい事が持上りました。その女たちの中でも一等|捌《さば》けるピン嬢《ちゃん》とチョキ嬢《ちゃん》という二人がノスタレだかオシッコだかわかりませんが病気になっちゃったんで、とりあえずの埋め合わせに聖路易《セントルイス》の支那料理屋に居たというチイチイっていうのとフイフイっていうのと二人の別嬪が手助けに来たんでげす。何しろ一人で卓子《テーブル》を六つ宛《ずつ》も持っているんで一人欠けても頬返《ほおげえ》しが附かないですからね。占めた。こいつは有難いことになったもんだと私《あっし》は内心でゾクゾク喜んじゃいました。ねえ。そうでしょう。今まで居た女には指一本さしても不可《いけ》なかったかも知れねえが、今度来た女なら差支《さしつけ》えなかろう。しかも向うが二人前ならこっちも二人前と云いてえが、片っ方が禿頭《はげあたま》の赤ッ鼻のノスタレじゃ
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