イス》の博覧会がオッ初《ぱじ》まる事になりますと、今のノスタレとオーム・シッコが二人でフロッキコートてえ活弁《かつべん》のお仕着せみてえなものを着込んで入口の処へ突立って、藤村さんから教《おそ》わった通りの英語を、毎日毎日大きな声で怒鳴るんです。
「じゃぱん、がばめん、ふおるもさ、ううろんち、わんかぷ、てんせんす。かみんかみん」
お笑いになっちゃ困ります。何てえ意味だかチットモ知らなかったんで……最初の中《うち》は茶目好きの藤村さんが「右や左のお旦那様」を英語で教えたんじゃねえかと思ってましたがそうでもないらしいです。お大師様の「あぼきゃあ兵衛《べえ》。露西亜《ロシヤ》のう、中村だあ」式の英語で、毛唐の厄払いか、荒神|祀《まつ》りの文句じゃねえかとも考《かんげ》えてみましたがそうでもないらしんで……ズット後《あと》になって聞いてみましたら「日本《じゃぱん》専売局《がばめん》台湾《ふおるもさ》烏龍茶《ううろんち》一杯《わんかぷ》十銭《てんせんす》、イラハイ《かむいん》イラハイ《かむいん》」てんですから禁厭《まじない》にも薬にもなれあしません。
もっともこのお祓《はら》いの文句の意味が
前へ
次へ
全52ページ中14ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング