野郎は雪舟の子孫だってえ事になったんですから呆《あき》れて物が云えませんや。あっし[#「あっし」に傍点]の方はモットおかしいんで……あっし[#「あっし」に傍点]はこれでも小手斧《こちょうな》の癇持ちでげして、小手斧《こちょうな》の木片《こっぱ》が散らかるのが大嫌いでげす。そこで最初《ノッケ》から手を附けた四十尺ばかりの美事な米松《べいまつ》の棟木《むなぎ》をコツンコツンと削《こな》して行く中《うち》に四十尺ブッ通しの継《つな》がった削屑《アラ》をブッ放しちゃったんで、見ていた毛唐の技師が肝《きも》を潰したもんだそうです。その話が亜米利加中の新聞に出たってんで、あっし[#「あっし」に傍点]が船の中で退屈|凌《しの》ぎに作った箱根細工のカラクリ箱が、まだ博覧会の初まらねえ中《うち》にスッカリ売約済みになる。六の親父《おやじ》をお雪の旦那のピイピイモルガンて奴が買いに来るってなアンバイで大した景気でしたよ。毛唐って奴はつまらねえ事を感心するんですね。ヘヘヘ。
その中《うち》に屋根の反《そ》ックリ返《けえ》った、破風造《はふづくり》のお化けみてえな台湾館が赤や青で塗り上って、聖路易《セントル
前へ
次へ
全52ページ中13ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング