、そんなに早くからわかってたら、あっし[#「あっし」に傍点]の生命《いのち》は無かったかも知れません。舶来の腸詰《ソーセージ》になっちゃって、毛唐の糞小便《くそしょうべん》に生れかわっていたかも知れねえんで……変テコなお話でゲスが人間の運てえものは、ドンナ事から廻り合わせて来るか知れたもんじゃ御座んせん。正直のところ「わんかぷ、てんせんす」と米の生《な》る木があっし[#「あっし」に傍点]の生命《いのち》の親なんで……。
とにかくソイツを訳のわからねえまんまに台湾館の前に突立って、滅法矢鱈《めっぽうやたら》に威勢よく怒鳴っているとドシドシ毛唐が這入って来る。台湾館の中では選抜《よりぬ》き飛切《とびき》りの台湾生れの別嬪《べっぴん》が、英語ペラペラで烏龍茶の講釈をしながら一枚八|仙《セント》の芭蕉煎餅《ばしょうせんべい》を出してお給仕をする。その毛唐らが這入りがけや出て行きがけにあっし[#「あっし」に傍点]とノスタレに五|仙《セント》か十|仙《セント》ずつ呉れて行きます。たまには一|弗《ドル》も五|弗《ドル》も呉れる奴が居る。そうかと思うと何も呉れねえでソッポ向いて行く猶太人《ジュー》み
前へ
次へ
全52ページ中15ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング