年ボーイと少年ボーイであった。
「馬鹿に早く手をまわしたもんですね」
「ナアニ。昨夜《ゆうべ》の録音フイルムが、徳山から海軍飛行機に乗って大阪まで飛んで行く中《うち》に現像されると、そのまま夜の明けない中《うち》に東京に着いたんだよ。あの録音の後《あと》の方に在った英国、露西亜《ロシア》、支那の三国密約の内容を聞いたので外務省が初めて決心が出来たんだ。大ビラで売国奴の名を付けて古川某を引括《ひっくく》る事が出来たんだ。みんな予定の行動だったのだよ。徳山と岡山と、広島と姫路にはそれぞれ水上飛行機が待機していたんだよ。今頃はモウ露満国境の守備兵が動き出しているだろう」
中学生が光栄に酔うたように顔を真赤にして紅茶を啜った。
「君の発明したオモチャが大した働きをした訳だよ。勲章ぐらいじゃないと思うね」
「……でも僕は気味が悪かったですよ。途中で怖くなっちゃったんです。あの人間レコードの声を聞いた時に……人間レコードって一体何ですかアレは……」
海軍軍医は左右を見まわした。一段と少年に顔を近付けて紅茶の皿を抱え込んだ。
「イイかい。絶対秘密だよ」
「大丈夫です」
「わかってみれば何でもない
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