いる準備工作に過ぎない。
帝国主義戦争を製造する国際聯盟、及びリットン報告書が、日本を裡面より如何に煽動し、中国の国際管理と分割を如何に執拗に提議しているかは、欧洲政局の裡面が最よく見透かされ得るモスコーに居なければわからないであろう。
米国の汎アメリカニズムと×××××××の矛盾は益々増大しつつあると、中国国民党の走狗《そうく》どもは云っているが、これは間違いである。米国が××××××しようとしていることは、彼等のヒリッピンの統治方法を見ればわかる事である。
これ等の工作の全部を一挙に覆《くつがえ》し、地上から××と××の影を潜めしむる任務は×××××諸君の双肩にかかっている。支那をしてソビエット政府の光栄ある治下に置き、彼等|虎狼《ころう》の爪牙《そうが》から免れしむることは一に新興×××××諸君の奮起力にかかっている。
起て。奮起せよ。武装せよ。
全世界を×××××の治下に置け。
××××万歳。
×××××××万歳。
××とソビエットの×××万歳。
[#地から2字上げ](一九三×年九月×日党、団、中央)」
「何だ。お前、ふるえてるじゃないか」
「ふるえてやしません。ソビエット帝国主義の宣伝の狡猾《こうかつ》さが癪《しゃく》に触《さわ》っているだけです」
「アハハ。ソビエット帝国主義はよかったナ。この宣伝に欺されてうっかりソビエットの治下に這入ったら最後、その国の労働者農民は、今のソビエットと同様に、運の尽きだからね。資本主義の国が人民から搾《しぼ》るものはお金だけ……ところがソビエット主義が人民から搾《しぼ》り取るものは血から涙から魂のドン底までと云っていいんだからね」
「しかし支那人は直ぐにソビエット主義に共鳴するでしょう」
「ウン。非常な共鳴のし方だ。ドエライ勢で新疆方面に拡がっているが、しかし支那人の考えている共産主義は、ホントウのソビエット主義とはすこし違うんだよ」
「ヘエ。ドンナ風に違うんですか」
「ホントの共産主義は要するに『他人のものは我が物。わが物は他人のもの』というんだろう」
「そうですね。まあそうですね」
「ところが支那人のは違うんだ。『他人の物は我が物。我が物は我が物』というんだから」
「アハハハハ」
「ワハッハッハッハッ」
「シッ……フイルムに残りますよ」
「……オヤ……。人間レコードが黙り込んだね。モウ済んだんじゃな
前へ
次へ
全12ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング