まの顔になって来るのよ……ソウシテネ……それをモットモット、いつまでもいつまでも見ていると、おしまいにはキットあたしを見てニコニコお笑いになるの……ソウスルトネ……そのお父様と、いろんな事をして遊んでいる夢を見るの……大きな大きなお船に乗ってネ……綺麗な綺麗なところへ行ったり……ソレカラ……」
「いけないわねえ子供の癖に……夜中に睡られないなんて……困るわね……どうかしなくちゃ」
 と云い云い母親は、こころもち青褪《あおざ》めた顔をして、チエ子の大きな眼をイマイマしそうに見つめていたが、やがて、急にわざとらしくニッコリして手を打った。
「……アッ……いいことがあるわよチエ子さん。お母さんがネ……おいしいお薬を買って来て上げましょうネ。ソレをのむとキッとよく睡られて、朝早く起きられますよ……ネ……晩によくオネンネをして、朝早く起きる癖をつけとかないと、今に学校に行くようになってから困りますからね……ネ……ネ……」
 チエ子は不思議そうな顔をしいしい温柔《おとな》しくうなずいた。そうしてその晩から、母親に丸薬をのまされて寝ることになったが、そのお蔭かして、あくる朝は割り合いに早く眼をさまし
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