寝ぼけ
夢野久作
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)荷《かつ》
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太郎さんはしじゅう寝ぼけてしくじるので、口惜しくてたまりません。明日は運動会だから、決して寝ぼけずにちゃんと自分で支度をして、みんなを驚かしてやろうとかたく決心をして寝ました。
あくる朝大へん早く起きたものがありますから、太郎さんは飛び起きますと、お母さんが坐って、
「太郎さん、今日は雨がふって運動会がお休みになったのだよ。さっき先生がお寄りになったから本当です。ゆっくりお休みなさい」
と言われました。太郎さんは昨日先生が「雨が降ったら運動会はおやめ」と言われた事を思い出して、安心して眠りました。
しばらくすると又太郎さんはお母さんからゆすぶり起こされました。
「太郎さん、太郎さん、大変よ。お天気になったよ。運動会があるよ」
太郎さんは、寝ぼけてはならぬと、寝床の中で考えはじめました。どっちが本当だろうと考えてみましたが、どうしてもわかりません。
「さあさあ、太郎、起きろ起きろ」
と今度はお父さんの声がしました。
「お弁当は出来ていますよ」
と姉さんの声もきこえて来ました
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