うですか……そのまぼろしの何とか言う湯の中の話なんかトテも素敵でしたよ。青黒い岩の間に浮いている二人の姿が、天井の鏡に映って、ちょうど桃色の金魚のように見えたって言いましたよ……ハハハハ……」
「馬鹿馬鹿しい。いつ行ったんだろう」
「一人で行くはずはないですがね」
「むろんですとも……呆れた奴だ」
「どうも怪《け》しからんですね」
「怪しからんです……実は今朝、貴官《あなた》から、いつまでも可愛がって置いて遣《や》るように御訓戒を受けましたが、そんな風に人の名誉に拘《かか》わる事を吐きやがるようじゃ勘弁出来ません。これから直ぐにタタキ出してしまいますから、その事を御了解願いに参りましたのですが」
「イヤイヤ。赤面の到りです。謹んでお詫び致します。どうか直ぐに逐い出して下さい。怪しからん話です」
「怪しからんぐらいじゃありません。私の不注意からとんだ御迷惑を……」
「しかしとんでもない奴があれば在るものですな。初めてですよ。あんなのは……」
「そうですかねえ。あんなのは珍しいですかねえ。貴官方でも……」
「所謂《いわゆる》、貴婦人とか何とか言う連中の中には、あの程度のものがザラにいるでし
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