ょうが、犯罪を構成しないから吾々の手にかからないのでしょうな」
「それともモット虚構《うそ》が上手なのか……」
「それもありましょう。つまり一種の妄想狂とでも言うのでしょうな。自分の実家が巨万の富豪で、自分が天才的の看護婦で、絶世の美人で、どんな男でも自分の魅力に参らない者はない。いろんな地位あり名望ある人々から、直ぐにどうかされてしまう……と言う事を事実であるかのように妄想して、その妄想を他人に信じさせるのを何よりの楽しみにしている種類の女でしょうな。一昨夜のお話に出た、子供を生んだという事実なんかも、彼女自身の口から出たものとすれば事実じゃないかも知れませんね。事によると彼女はまだ処女かも知れませんぜ……ハッハッ……」
「アハハハハ。イヤ。非道《ひど》い目に会いました。どうかよろしく……」
「さようなら……」 
 そう言って別れた帰りがけに私は、彼女の身元引受人になっている下谷の伯母の処へ電報を打った。世にも馬鹿馬鹿しい長たらしい夢から醒めたように思いながら……それでも彼女の伯母さんなる人物が、真実《ほんとう》にいるのか知らんと疑いながら……。

 彼女の伯母さんと言う髪結い職の婦
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