れたそうですが……」
「ヘエ。驚きましたな。あの女は少々電話マニアの気味があるのです。よく電話を応用して虚構《うそ》を吐きます。そんな電話が実際にかかっているように受け答えするらしいのです」
「とにかくソンナ訳でユリ子は、大急ぎでお化粧をして、盛装を凝《こ》らして病院を出て行ったそうです」
「プッ。馬鹿な……盛装の看護婦なんか連れて診察に行けるもんじゃありません」
「そうでしょう。私もその話を聞いた時に、少々おかしいと思いました。看護婦を連れて行く必要があるかないかは病院を出られる時からわかっているはずですからね」
「第一、そんな疑わしい連れ出し方はしませんよ。ハハハ」
「ハハハ。しかしその時のお話を随分詳しく伺いましたよ。まぼろしの谷[#「まぼろしの谷」に傍点]とか何とか言う素晴らしい浴場がそのホテルの中に在るそうですがね。行った事はありませんが……」
「僕は聞いた事もありません。そのホテルでラルサンという毛唐《けとう》と一緒に食事はしましたがね。まだいるはずですから聞いて御覧になればわかりますが、かなりの神経衰弱に中耳炎を起しておりましたから、鼓膜切解をして置きましたが……」
「そ
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