、泣けて泣けて仕様がなくなりました。ただメチャメチャに悲しい思い出を頭の中に渦巻かせながら、校長先生のお胸にグッタリと取り縋っておりました。
 そのうちに時間がグングン流れて行きました。
 ……ああ……けれども、それは何と言う悲しい、浅ましい一刹那の夢で御座いましたろう。
 間もなく入って来られました虎間トラ子先生……私たちがデブさんと言っておりましたあの古参の英語の先生に、私がドンナに非道《ひど》い目に会わされました事か。そうして真暗闇の中で、どんなに一所懸命の力を出して虎間先生を突飛ばして廃屋の外へ逃げ出しましたことか。
 そうして一旦《いったん》コンクリート塀の外へ飛び出してから、直ぐにまた、弓の道場の間に忍び込んで、あの廃屋の横の切戸の隙間に耳を近付けて、ドンナに真剣に、お二人の口争いに耳を傾けておりましたことか。
 その時に校長先生が、どんなに狼狽《ろうばい》してお出でになったことか。お顔色こそわかりませんでしたが多分、真青になっておられたことでしょう。暗黒に狃《な》れて来た眼でソッと覗いてみますと、運動会用の大きな張子の達磨《だるま》様のお尻の間に平突張《へいつくば》って、
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