しても逃れる事の出来ない運命に囚《とら》われてしまったような物悲しい気持になってしまったのでした。
 ……ああ……馬鹿な私……不覚な私。校長先生が評判の通りの聖人でない。ほかの女の方とここで会う約束をしておられた……その女の方と私とを間違えておられる事を、あの時にどうした訳かミジンも察し得ずにいたのでした。多分、私の心の奥底に残っておりました尊敬の心が、校長先生を疑う事を許さなかったのでしょう。
 ……ああ……浅墓《あさはか》な私……私は校長先生のお金に関する醜いお仕事の数々を知り過ぎるくらい、存じておりました。けれども女性に対しては、どこまでも潔白なお方と信じ切っていたのでした。よしんば馬鹿騒ぎをなさる事はあっても、校長先生お一人は、男性としての貞操を何処までも、お亡くなりになった奥様に対して守ってお出でになる感心なお方とこの時までも思い込んでいたのでした。その聖人同様の校長先生にコンナ秘密の悩みがあるとは何と言うお気の毒な事であろう。私にソレを打ち明けて下さるとは何と言う勿体《もったい》ない事であろう……としみじみ考えておりますうちに私はもう、何もかもわからなくなるほど悲しくなって
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