の一片よりも高価なものでは御座いますまいか。
 召上ったお心持は如何で御座いますか。
 定めし清々なすって、お心の隅から隅までスウッとなすった事で御座いましょう。
 ホホホホホ。ホホホホホホホ……。
 その私……黒焦になった火星の女の復讐を、こうして手伝って下さる私の親友が、どなたかと言うような事は、お考えにならない方がいいでしょう。万一それが御判明《おわかり》になっても、ただビックリなさるばかりで、手の出しようがないので、お困りになるだけの事でしょう。
 その方は、私のような通りがかりの出来事で先生を恨んでお出でになるのでは御座いません。その方は、肺病でお寝みになっておられる実のお母様と、校長先生に誘惑されて無情な放蕩《ほうとう》ばかりしてお出でになる義理のお父様に仕えながら、そんな事情を世間へ洩《も》らさないために、女中も置かないで、黙って楽しそうに立ち働いてお出でになる、世にも珍しい親孝行なお方です。そうして、その方のお母様をソンナ運命に陥れた悪魔を、いつも心探しに探しておられた方です。ですからその方は、私からその悪魔の名前をお聞きになると直ぐに、お母様の讐敵《かたき》を取りたい
前へ 次へ
全225ページ中156ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング