ックリしましたわ。どうして新高さんが、妾のような女を貰う気になったのだろうと思いましてね。
新高という人はシンカラ無口の人らしいのです。待合室に来ても、ほかの運転手のように女車掌に甘ったるい事を言ったり、妙な眼付きをした事なんか一度もないのです。並んで腰かけている私たちを見向きもしないで、スパリスパリ煙草ばかり吹かしているのです。
そうかと思うとダシヌケに、ヤンチャを言っているお客さんの子供を抱き上げて、頬擦りをしてキャッキャと笑わせたり、十銭で三つぐらいの一番|高価《たか》いお蜜柑を一円ばかりも買って来て、黙って私たちにバラ撒《ま》いたままプイッと外へ出て行ってしまったりしてトテモ気まぐれな人なのです。
そうかと思うとまた運転台で、バットを吸い吸いモノスゴイ速力を出しながら、ステキに朗らかな澄み切った声で、
エーエ。二度とオー惚れエーまいイ運転手のオ――畜生めエ――
敷き逃げエ――したア――ままア――知らぬウ――顔オ――
なんて歌って、満員のお客をゲラゲラ笑わしたりするのです。その癖、遊びに行った話はチットモ聞きません。いつもお金をポケットの中でジャラジャラ言わせているの
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