所感
夢野久作
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)地謡《じうたい》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)それから久しい間|経《た》った
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)私のあたま[#「あたま」に傍点]は
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「アヤカシの鼓」当選後の所感を書けとのことですが、只今のところ私のあたま[#「あたま」に傍点]は諸大家の御評を拝してすっかりたたきつけられていまして、いくらか残っていた自画自讃みたような気もちまでもパンクしてしまったばかりのところなので、所感なぞいう気もちにはとてもなれません。ですからここには只、私が執筆中知らず知らずに陥っていた錯覚がどんな風にこの一篇に影響しているかという原因についての告白みたようなものを述べまして、一つは選をなすった方の御苦心の万一に酬い、且つは私の心に消え残っている妄執を打ち消すよすがともさして頂きたいと思います。
震災後の或る年の秋でした。ある地方で私の師であるAという人の「俊寛」の能がありまして、私も地謡《じうたい》の末席として招集されましたので、私は職業の方を二日ばかり休
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