な遊びをあんたに教えて見たくてしようがなくなって来たの。それも、当り前の打《ぶ》ったり絞《し》めたりする遊びなんかじゃ我慢出来ないの……一と思いにあんたを殺すかどうかして終《しま》わなくちゃトテモやり切れないと思うくらい、あんたが可愛いくて可愛いくてたまらなくなったのよ。
……妾、それをやっとの思いで今日まで我慢していたのよ。何故って、万が一にも妾からそんな話を切り出したら、あんたがビックリして逃げ出すかも知れないと思ったからよ。……だけど、それがもう今夜という今夜になったらトテモ我慢がし切れなくなっちゃったのよ。
妾はきょうも、いつものように日暮れ前からこの室に這入《はい》って、お掃除を済まして、ペーチカに火を入れたの。そうしてスッカリお化粧を済ましてから、あんたを待ち待ち昨夜《ゆうべ》の飲み残しのお酒を飲んでいたら、そのうちに室《へや》の中が静かアに暗くなってね。向家《むこう》の屋根の雪の斑《まだら》と、その上にギラギラ光っている星だけがハッキリと見えるようになって来たじゃないの……妾もうスッカリあの晩と同じ気もちになってしまってね……たまらなく息苦しくて息苦しくて……。アラ…
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