第二の告白の方は昨日《きのう》の夕方箱崎の署長が当社へ礼云いに来た。お蔭で、永い間の不名誉を回復しましたチウテナ。法学士出のホヤホヤの署長じゃが、学生上りの無邪気な男でな。その序《ついで》に何も彼《か》も喋舌って行きよりましたよ」
「第三の告白の方も署長が喋舌ったんですか」
「イイヤ。それはわし[#「わし」に傍点]が署長に入れ智恵したことですわい。犯罪の定石ですからな。あの署長は無経験な正直者ですけにキットわし[#「わし」に傍点]が云うた通りに誘導訊問をしましょうて……」
「ヘエ……それじゃ、まだ実際に白状した訳じゃないんですね」
「……モウ今頃は白状しとりましょう。犯人もむろん後家さんと同棲する腹じゃないのじゃから、将来の考えが頭の中でチグハグになっとるに違いない。それじゃからどこかで返事をし損ねてキット誘導訊問に落ち込んで来ますてや。たとい犯人が否定し通しても箱崎署から文句を云うて来る気づかいはありません。君の手腕に恐れ入って感謝しとるのじゃから……実はこの朝刊の記事がすこし足りませんでしたからな。アンタのお株をチョット拝借したまでじゃ……ヒッヒッ……」
「驚いた。生馬《いきうま》
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