ていたらドンナにか気楽でよかったろう。明日《あす》の朝起きてみたら、皆騒いでいる。材木置場《おきば》[#ルビは「材木置場」にかかる]で可愛い娘が絞殺《しめころ》されている。どこの誰だか見当が附かない。その中《うち》に夕刊を見てからヤットわかる……といった方がドレ位、気苦労がないか知れやしない。
だけど最早《もはや》、こうなっちゃ、絶対に知らん顔をしている訳に行かない。何とかして俺の腕一つで片付けなければならないが、しかしその何とかしようがサッパリ見当が付かない。向うから汽車が来る。こっちからも汽車が来る。打《う》っ棄《ちゃ》っておけば、衝突するにきまっている。ああ、俺はドウしたらいいだろう……といったような事を、夜具の中でグルグルグルグルと考えまわしているうちに、いつの間にかウトウトしたらしい。ハッと気が付いて頭を持上げてみると、広い部屋の中央にタッタ一つ光っている五燭の電燈の下に、皆帰って来て寝ているらしく、大浪を打っている夜具の下から赤茶気た、毛ムクジャラの太股を片ッ方くの字|型《なり》に投出している者。頭の上に腕を突出してポリポリと掻いているもの。ムニャムニャムニャと美味《おい
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