黒白ストーリー
夢野久作
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)苦味走《にがみばし》った
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)又|仕舞《しま》い込んだ。
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]
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材木の間から
―― 1 ――
飯田町附近の材木置場の中に板が一面に立て並べてあった。イナセな仕事着を着た若い者三平はその板をアチコチと並べ直しながらしきりにコワイロを使い、時には変な身ぶりを交ぜた。三平は芝居気違いであった。
三平はふと耳を澄ました。材木の間から向うをのぞいたが、忽ち眼を丸くして舌をダラリと出した。
インバネスに中折れの苦味走《にがみばし》った男と下町風のハイカラな娘が材木の積み重なった間で話しをしている。
三平は耳を板の間に押し込んだ。
…………
じゃ今夜飯田町から……
終列車……
エ……
ここで待っててネ……
妾《わたし》がお金を盗み出して来
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