るから……
 二千円位あってよ……
 …………
 三平はビックリして又のぞいた。
 …………
 …………
 娘は立ち去った。
 あとを見送った男は舌なめずりをしながらあたりを見まわした。凄い顔をしてニヤリと笑った。
 三平は材木の隙間から飛び退《の》いた。そこをジッと睨んで腕を組んだ。そのまま鳥打を眉深《まぶか》に冠り直して材木の間を右に左に抜けて往来に出た。キョロキョロと見まわした。
 往来は日が暮れかかっていた。
 はるか向うに今のハイカラ娘が行く。
 三平はあとを追っかけた。近くなると見えかくれに随《つ》いて行った。

     ―― 2 ――

 女はガードを潜《くぐ》って水道橋を渡って築土八幡《つくどはちまん》の近くのとある横路地を這入《はい》った。三平も続いて這入った。
 娘は突当りの小格子《こごうし》を開けて中に這入った。小格子の前には「質屋」と看板が掛かっていた。
 三平はその前に立ってあたりを見まわした。
 小格子の中から禿頭《はげあたま》のおやじ[#「おやじ」に傍点]が出て来た。三平を見るとウロン臭そうに睨んだ。
 三平は思切って鳥打帽を脱いでお辞儀をした。
 失礼
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