ですが……
今お帰りになったのは……
お宅のお嬢様ですか……
禿頭はだまって三平を見上げ見下した。ギョロリと眼を光らした。
そうです……
私の娘です……
何か御用ですか……
三平はホッと胸を撫で下した。
ああ助かった……
やっと安心した……
禿頭は呆れた。三平の様子を穴のあく程見た。
三平は禿頭の顔を見た。急に声を落して眼を円《まる》くして云った。
タ大変ですぜ……
お嬢さんはね……
どっかの男と……
今夜駈け落ちの相談を……
三平は突き飛ばされて尻餅を搗《つ》いた。
禿頭は睨み付けた。
馬鹿野郎……
あっちへ行け……
三平は禿頭の見幕に驚いた。起き上りながらあと退《ずさ》りをした。娘が小格子から顔を出した。
三平は慌てて逃げ出した。
―― 3 ――
三平は考え考え歩いた。フト頭を上げると警察の前に来ていた。暫く立ち止まって考えていたが思い切って中に這入った。
警官が二三人かたまってあくびをしていた。三平が這入って来ると肘《ひじ》とお尻にベッタリくっ付いた泥に眼を付けた。
三平はヒョコヒョコお辞儀をしながら事情を話した。
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